美と技を競い合う競技ダンスにおいて、容姿が美しいことは勝つための重要なポイントの一つ。ダンスに有利な容姿といえば、先ずは背が高いこと。背の高い選手は、それだけでフロアで目立っている。そして小顔であること、首が長いこと、アーム(腕)が長いことなども利点といえよう。ちなみにアマチュア競技選手である我々カップルに共通して言えることは、二人とも身長が低い。しかも、顔はでかい。首は短いし、アームも短い(とくにリーダー)。おまけにリーダー・パートナー共に、前髪の生え際が後退している。お世辞にも、見目うるわしいとは言えない、『チビハゲカップル』だ。(涙)
小柄というハンディーを背負いながらも、全日本選手権のスタンダード部門でファイナルにまで登り詰めた自称『チビ』の某先生が、ゲストとして招待されたパーティーで、このようなトークをなさった。
「…チビは努力しても、報われないんですよ。でも、ラッキーなことに、私は顔が良かったんですね。この顔で、だいぶ得をしました…」
彼のジョークに、大勢のお客様達は大笑い。一方、『男は顔は二の次』と思っていたリーダー君は、その時に固まってしまったという。
ちなみにリーダー君が尊敬するスタンダード・ダンサーは、元世界ファイナリストである、ウィリアム・ピノ。小柄だが、クールで端整な顔をしたイタリア人選手だ。ピノが世界選手権で闘っているビデオを見ると、他の選手達よりも明らかに背が低いことが分かる。表彰式で選手達がお互い頬を寄せ合うシーンがあるが、彼の背丈に合わせて、よそのパートナー(女子)達が腰をかがめている。ピノは5種目総合優勝が出来なかったとはいえ、タンゴとクイックステップにおいては彼の右に出る選手はいなかった。スタッカートの効いた、アクロバティックな見事な演技であった。もしピノの身長が、あと10センチ高かったら、世界選手権で優勝していたかもしれない。
かつてピノが来日した時、彼のファンであるリーダー君は横浜まで彼のデモンストレーションを見に行ったそうだ。幸運にもリーダー君は憧れのピノに握手してもらったそうだが、自分よりもピノの身長が低いという事実に驚いたという。
『最低限、ボクは世界で闘える身長を授かっている!』
リーダーはその時、『光』が見えたという(大笑)。
さて、春期の新潟県スポーツダンス選手権大会に出場した時のこと、チビの我々が、ライジングスターのタンゴ単科戦で決勝入りすることができた。結果は5位。表彰式の後、記念撮影が行われた。7組の選手達が、パートナーを前にしてカメラに向かって一列に並んだのだが、撮影時に背後からプルプルおかしな振動が伝わってきたのだ。震源はリーダー君。前列に並んでいるパートナー達の身長が自分の身長よりも高いことに気づき、表彰式から記念撮影の間中、ずっとつま先で踏ん張って、根性立ちをしていたそうである。(笑)
パートナーから一言:記念撮影では、女子の長いドレスに隠れて、足下が見えなくて良かったね。これがラテン・アメリカンの表彰式なら、ちょっとエグイかもよ。
ラテンでも、やります! だって、顔が見えなくなるんだもの。(リーダー談)
著者名 眼科 池田成子