ダンスはすぐには上達しないといわれる。しかし、あまりにも下手な自分に、嫌気がさすことがある。高田のダンススクールに通い始めて、3年が経過しようとしている。1年も経てば、赤ちゃんは『よちよち歩き』が出来るというのに、ルンバウォークに関しては、未だに『ひとり立ち』が出来ない自分がいる。思い起こせば3年前、当時はサークルで社交ダンスを習いたてで、先輩方からは可愛がられ、パーティーではチヤホヤされ、競技ダンスとはどんなものかを全く知らなかった。
「お上手ですね!生前は、ダンサーだったんじゃないですか。」
プロの先生から、褒められたこともあった。しかし、実際に競技ダンスを始めて、『癒しのダンス』と『勝つためのダンス』の違いを知った。まず、コーチャーは、生徒にお世辞は一切言わない。
「池田さんの踊りは下手ではありません。クソが付きます。下手クソ!」
また、別の先生の前でルンバを踊って見せたら、
「それは、ルンバではない!」
真顔で言われた。
どっひゃ〜;;!(苦笑)
さて、ある料理研究家のもとで勉強している知人から聞いた話である。彼女は先生から、スタッフ全員のまかないをするよう言い渡された。彼女が作った料理を一口食べた先生いわく、
「これは、料理ではありません!」
精魂こめて作られた料理は、そのままゴミ箱行きへ。(彼女には悪いのだが、それを聞いた私はニヤリ)
ゴミ箱行きで思い出した。日本のプロの競技選手が、海外へ留学した時の記事がダンス雑誌に掲載されていた。外国人コーチャーから
「私なら、あなたの踊りはゴミ箱に捨てる」
そうコメントされた時、
「だからこそ、先生のレッスンが必要なのです」
めげずに頑張ったそうである。
ありがたいことに、私達カップルの場合、先生や先輩方から踊りに関していろんなコメントをいただく。
「もっと動け!チビが競技で勝つためには、スピードが必要だ」
「踊っている時の、パートナーの顔が怖い。(立つのに必死ですので…)」
「二人の動きがバラバラだ」
そういえば研修医の頃、出来の悪い私は大学病院の先輩医師から、コテンパに叱られていた時期があった。仕事がこなせなくて怒鳴られた後に、
「言われなくなったら、終わりだぞ」
と、先輩からの『愛』のムチ(苦笑)。同様に、競技ダンスも言われなくなったら、おしまいなのだろうか?
競技生活にしても、外科系の医師としての生命にしても、人生において頑張り続けることができる期間は、そう長くはないだろう。言われている今が『旬』、そして『華』なのかもしれない。
著者名 眼科 池田成子