ダンスに馴染みのない方でも、「ルンバ」という名前だけは聞いた事があるだろう。ルンバはラテンの基本といわれ、男と女の愛の物語を表現した踊りである。四分の四拍子の曲に合わせて、二人が近づいたり離れたりしながら一体感をもって踊るのであるが、二人のタイミングがぴったり合うこと、そして二人の空間を巧く使うことが、競技会での採点に大きく評価される。
さて、『愛の踊り』と言われるルンバ、いかに男らしく、いかに女らしく踊るかが命とはあれ、私の踊りは傍目にも女らしくないらしい。レッスン中に「もっと女らしく!」と声が飛ぶ。
あるレッスンの日、「おかまになったつもりで踊りなさい」と、先生からアドバイスをいただいた。「ええっ!おかまですか?」先生いわく、歌舞伎役者の女役は女以上に女らしく、宝塚の男役は男以上に男らしい。確かに、そうだ。歌舞伎の女形の美しさ、しなやかさにはあっと息を呑むものがある。男が本物の女よりも艶やかで女らしい。宝塚の男役もそうだ。歩き方といい、立ち振る舞いといい、男以上に精悍でカッコイイ。優秀なラテンダンサーには、ゲイが多いという噂を聞く。そうか…非常手段ではあるが、私はおかまに成りきって踊ればいいんだ!すると、あら不思議。体の力みが抜けて、ねばるように全身がゆっくり、自分とは思えない色っぽさが出た感触あり。そんな踊りに、先程まで注文をつけていたリーダー君も腰をうねらせノリノリ!
長野で開催される競技会まで、あとわずか。『おかま効果』は、『愛の踊り』を表現するのにどのくらい威力を発揮するか、結果が楽しみである。
著者名 眼科 池田成子