春と秋には各地でダンス競技会が開催される。昇級を目指して、我々は関東甲信越ブロックの大会にくまなく出場しており、これを『ダンス遠征』と呼んでいる。競技会には衣装をはじめ何かと荷物が多くなるため、開催地への交通手段はマイカーを利用している。糸魚川から埼玉や栃木、千葉や茨城への長距離運転に備えて試合に疲れを残さぬよう、ダンス遠征用の車選びをするリーダーは、半端ではない(笑)。
試合前日、糸魚川インターからいざ出陣。出発からもう試合が始まっているものと、身を引き締める。サービスエリアで数回の休憩を入れながら目的地へと向かう。小布施のサービスエリアでは、自動販売機で300円の食券を購入して、小布施名物『栗ソフト』を食べる。これは試合に臨む時の“縁起担ぎ”だ。栗ソフトを食べ終えると、『ダンス遠征』の目的の半分は達成したような、高揚感が沸き上がる。小腹がすいた頃に、横川のサービスエリアに到着。そこでは名物『峠の釜飯』を食べる。栗とあんずに、塩辛く味付けされた鶏肉の組み合わせは食欲をそそり、明日への闘争心を奮い立たせてくれる。走行中リーダーは、目的地に着いたら夕食に何を食べようかと思案している。
目的地に到着。腹がへっては戦ができぬと、地元の名物をもりもり食べる。こんなに大食いの中年カップルはいるのだろうか…と、我ながら驚きである。勝つためには節制が必要と、リーダーも私も試合前夜は大好きなお酒を控える。ビールをジョッキ1杯でやめるつもりが、いつしか桃源郷の境地になっていることもある(競技選手として、あるまじき行為?)。
試合終了後、結果を反省しながら、帰りの岐路につく。開催地のサービスエリアで、おつまみを購入。「一遠征・一珍味」と、負けてもリーダーは嬉しそう。嗚呼、競技とは名ばかりか…(苦笑)。
著者名 眼科 池田成子