継続は力なり、下手なら尚更とばかり、盆・暮れ・正月なく、結婚のあてもなく(苦笑)ダンスの練習に勤しむアマチュアダンサーのリーダーと私である。昨年2月14日のバレンタインデーはありがたいことに、患者様や女性看護師さん、病院関係者の方々から真心のこもったチョコレートを沢山戴いた。
その日の晩の出来事である。仕事を終えていつもの練習場で、練習前の準備運動をしていた。リーダーはいつもと違い、なんだか落ち着きがない。ふと振り返って、びっくり仰天!私にことわりもなく、リーダーは私が戴いたチョコレートの包装を勝手に破り、むしゃむしゃ食べている。しかも、まるでやけ食い状態・・・。
事情をよく聴いた。職場には女性がいるのに、その日彼は誰からもバレンタインのチョコを貰えなかったという。唯一彼にプレゼントしてくれた人は、職場で清掃をしてくれている5歳年上の既婚のお姉さんで、チョコではなく煎餅だったそうだ。彼女から、「チョコをあげて、勘違いされたら困るから。」と、真面目な顔で言われたそうである。「どうせ僕は、女にモテない哀れな40代独身男だ。恋人はダンスだけでいい!」そうつぶやくリーダーの哀愁漂う背中を、パートナーは切実に励ます。「ダンス上手になりなさい!そうなれば、きっとモテるようになるよ。ダンスが好きな女性は、ダンスの上手な男を放っておかないから・・・。」
数々の競技会で一次予選落ちを経験してきたリーダー君、さすがに落ち込みからの回復も早い。気分を切り替えて、もう踊る気満々(笑)。バレンタインデーの晩も、二人は遅くまで練習に励んだのであった。
著者名 眼科 池田成子