社交ダンス物語 7 「眼科医ケープになる? パソ・ドブレに挑戦」

コラム

 長岡大会のラテンに挑戦。種目は『パソ・ドブレ』である。これはどんな踊りかというと、スペインの闘牛をイメージしていただきたい。男子は闘牛士(マタドール)、女子は闘牛士の持つケープ役になる。闘牛士が真っ赤なケープをひるがえし、勇敢に牛に戦いを挑むシーンを曲に合わせてダンスで表現するものである。
 二ヶ月で踊りを覚えて、競技会出場というハードスケジュールが組まれたため、真夜中に病院の講堂で猛練習が行われた。「あなたはケープどころか、農耕牛のように重い・・・」マタドール役が呟く。鏡に映った自分達の踊りは、闘牛と呼ぶには遥かに程遠い。工事現場で旗を振っているかのようだ。泣けてくる。
 いよいよ大会当日、対戦相手達はラテンダンサー特有の野生動物のようなオーラを発している。フロアに立った時、向こうに眼に見えない牛がいると想像した。こちらへ向かって突撃してくる・・・右左のわき腹をひる返し、ケープになりきって懸命に踊った。予選落ちだった。(トホホ・・・)
 翌日、筋肉痛あり。右脇を抱えながらも、病院の廊下でステップを踏んでいる自分がいた。ひょっとして、『ダンスバカ』になったのだろうか・・・。

著者名 眼科 池田成子