社交ダンス物語 379 痛いの、解決!

コラム

 駆け足で、ひと夏は過ぎ去りましたね。今年の夏の一大イベントは、皆さま何でしたか? カメムシが飛んできて、目に当たったという患者さまもいらっしゃいました。患者さまの目は真っ赤。ご愁傷さまです。さぞかし痛くて臭くて切なかったことでしょう。私の夏の一大イベントは、右足の小指を負傷したことです。(第375話)痛くて普通の靴は履けませんでした。サンダルも、小指にわずかでも触れたらムリ。富山市で開催された眼科医のセミナーには、下駄で参加しました。モノトーンのワンピースに、黄色い鼻緒の下駄です。
「まあ、オシャレ!」
「足元が涼しげ!」
皆さん褒めてくださいました。自分はファッションで下駄を履いていたのではありません。痛いので、やむを得ず下駄を履いていただけです。(涙…笑)
 
 足の小指を負傷してからのダンスの競技会は、痛み止めをガツンと飲み、スタンダードの靴の小指があたる部分をくり抜いて出場しました。(第375話 第376話)他方、ラテンの靴は構造上無理だろうとのことで、試合は欠場しておりました。(第377話)足の小指を骨折した場合、完治して競技復帰まで3ヶ月と言われます。そろそろ3ヶ月が経とうとしているのに、小指の腫れはひきません。痛いまま。ラテンのシューズは、履くこともままなりません。靴を履いて踊ると激痛が走り、すぐに脱いでしまいます。
「池田さん、待っていたらそのうち治るから…。」
コーチャーはそう言っています。でも自分は待つのが苦手な性格。自分たちチビ・ハゲの競技会での敗因は、パートナーがリーダーのリードを待ちきれずに、自分から先に動くからと指摘を受けますので。(これってボールルームダンスでは、致命的?)
『鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス…』
はい。待ちます。でも、いつまで待てばよいの?
 
 競技選手が怪我をした場合、焦りと不安に襲われます。試合に出られないだけでなく、その間は練習もままならず、他の選手から遅れをとってしまいます。ラテンのシューズを履きたい一念で、自分は意を決してシューズの小指があたる部分のメッシュを、バッサリはさみで切断しました! 
『鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス』か、ですって? いえ、この場合は『鳴かせてみよう』です。その靴を履いて笑顔! 小指があたる部分が減圧されて、シューズを履いても痛くありません。女子のラテンのシューズは通常、5本のメッシュが両側から出て、中央でクロスして固定されています。シューズのメッシュを1本切ったら、構造上不安定になり、他のメッシュにも影響を及ぼして靴はダメになるかと思いきや、実際小指側のメッシュを1本切断したところで、致命的ではないということが判明いたしました。靴底から小指が滑って外へはみ出しそうになりますが、ルンバウォークをする際は小指を安定させるため、親指と土踏まずを内側に引き寄せるように重心をかけます。すると、かつてラテンの講習会で習った「内モモ」「内かかと」をより意識。怪我の巧妙? ガニ股の自分にとって、ルンバウォークの良い練習になりました。
 
 そこで筆者からのメッセージ。自分と同じ、足の指を負傷された競技選手のパートナーさん、そしてダンス愛好家の方々へ。痛くてダンスシューズが履けないから、試合やデモ、パーティーはムリと諦めないで下さい。痛いのは、これで解決! スタンダードのシューズは痛い部分をくり抜けば、さほど問題なく履いて踊れますし、ラテンのシューズも然り。痛い部分に当たるメッシュを切断することで、痛みは和らぎ踊ることは可能でした。足の指を骨折してもダンスできます。はい? 穴を開けた靴を履くなんて、格好悪くないかですって? 穴あきズボンをファッションで楽しんでいる方もいらっしゃいます。そもそも踊っていたら、遠目でみれば靴の穴なんて分かりませんよ。え? 靴をカットしたり穴を開けてまで、ダンスするかですって?
「うんうん、分かる。その気持ち!」
ボールルームダンスのファン(ダンス馬鹿)なら、うなずいて下さるでしょう。(笑)
著者 眼科 池田成子