社交ダンス物語 390 眼に良いことのススメ

コラム

 毎年2月後期に、うちの病院でドックを受けております。正直、ドックはコワいです。
「医者がドックはコワいだなんて?!」
読者の皆さまから、呆れられるかもしれません。手術室で目の手術を受けられる直前の患者さまの血圧は、200を越えることがあります。ドックの血圧測定では自分も同じ? 採血もこわい。腕に針を刺されるのですよ! 自分は患者さまの眼球に針を刺していますけど。(苦笑)視力検査、コワすぎ!「視力が足りません」前々回のドックで、眼科医はそうコメントされました。覗き込むタイプの視力検査では、実際よりも視力が出にくい方がいるのは事実です。胃カメラは拷問そのもの!(ムンクの叫びマーク)
 
「コワいから、僕は絶対に脳ドックは受けません!」
うちの病院の脳神経外科の先生が、かつてそう言っていましたね。ご自分は一度も眼底検査を受けたことがないと、眼科の教授先生が仰っていたことも思い出されます。病院は大嫌い!検査も嫌い!という方はいらっしゃるとご想像されます。でも、ここで眼科医からのお願いがあります。40歳を過ぎたら、年に一度は眼底検査(カメラ)を受けていただきたいのです。
「こんなに見えているのに、何で目の検査をしなきゃいけないのか?」
はい。でも、見えなくなってから眼科を受診されても、元に戻らない病気があります。
 
 その病気の代表が緑内障です。緑内障は40歳以上の20人に1人、70歳以上では9人に1人と、非常に頻度の高い病気です。視神経の障害は不可逆的ですので、いったん見えなくなったら元には戻りません。加齢でも視神経は減少するため、高齢化に伴って患者数は増えています。緑内障は現在、失明原因の第一位です。でも、緑内障になったからといって悲観することはありません。早期発見・早期治療していれば、ほとんどの方は天寿を全うされるまで、日常生活で見え方に支障をきたすことはないといわれます。緑内障の治療の基本は目薬です。目薬で十分な効果が得られない場合は、手術があります。
「緑内障と言われて、治療しているの。」
同じダンス教室の先輩から、どうしたら良いか質問されることがあります。そこで昨年末の眼科学会で学んだ、緑内障患者さまが普段気をつけていただきたい最新情報をお伝えいたします。
 
ポイントは、血圧、運動、嗜好品。
1)血圧
 血圧と眼圧は関連があります。収縮期血圧(上の血圧)および拡張期血圧(下の血圧)の上昇で、ともに眼圧が上がることが知られています。しかし、高血圧よりも、緑内障の進行に影響を及ぼすのは低血圧です。高血圧で厳格すぎる血圧下降は要注意。収縮期血圧が107以下では、緑内障の視野変化が進行することが知られています。限界値は108/63。とくに正常眼圧緑内障の患者さまは要注意です。血圧が低すぎると、眼へ流れる血液の量が減り、緑内障がより早く進行してしまいます。
2)運動
 運動は眼圧を下げて、神経を保護する作用があるため、緑内障の予防・進行抑制の効果があります。緑内障患者さまにおいて
1.一日に5000歩以上の歩行
2.座位を一日2.6時間以下
3.運動を一日2時間以上
で、視野進行を10%遅らせることが知られています。適度な有酸素運動(汗ばむ運動)を週3回30分ぐらいはお勧めです。しかし、運動のやりすぎは良くありません。トライアスロン、筋トレ、ヨガの頭を下げる運動、逆立ちのポーズは、眼圧が10mmHg以上も上昇することが知られているので要注意です。
3)嗜好品
 緑茶、紅茶、コーヒーにはカフェインが含まれています。カフェインの摂取で眼圧が上がるという報告があります。緑内障は遺伝しやすい病気です。血のつながった人に緑内障がいない場合は、カフェイン摂取はさほど問題ないといわれます。しかし、緑内障の家族歴のある人は、コーヒーを一日に5杯以上飲むと、眼圧があがり緑内障になるリスクは大です。前視野緑内障(視野に異常が出る前の極早期の緑内障)の方や緑内障の家族歴のある人は、カフェインの過剰摂取には注意しましょう。
 
☆ムズカシイこと言ってゴメンナサイ。人生100年時代、定期検査、そして社交ダンスは眼にもってこい。(笑)もっと知りたいという方は、糸病眼科外来へ!
著者 眼科 池田成子