社交ダンス物語 391 ダンス円満

コラム

 円満といえば、何を連想されますか? 家族に夫婦、離婚ですって? 修復が難しいものに『夫婦』があげられるようですね。夫婦仲は一旦こじれると、非常に厄介だと先輩の医師はぼやいていました。夫婦といえば、競技ダンスのリーダー(男子)とパートナー(女子)は『夫婦以上の関係』と言われます。夫婦以上の関係って、どんな関係なの? 私は結婚の経験がありませんので。競技ダンスのリーダーとパートナーはご夫婦もいれば、よその奥さん旦那さんと組んでいるカップル、そして自分たちのような独身同士もいます。
 
 同じ男女でもご夫婦との最大の違いは、競技ダンスは勝つために結成されたカップルであること。競技会場では、試合直前の練習でうまくゆかず、眉間にシワをよせて罵声を浴びせているカップルを見受けます。でも翌日には、二人は修復可能。何もなかったかのような顔で練習をしています。そもそも二人の共通の目標は、『勝つ』こと。ところで、いつも円満な競技ダンスのカップルって、どんなカップルなの? 常に『勝ちの味』を味わっているカップルでしょうね。パートナーさんがリーダーさんをワンワンと責め立てるのは、フツーなこと。「あなたが悪い!」「リードが伝わらない!」「勝ってからモノを言え!」など。ここで、ダンス円満とはほど遠い例を考察してみましょう。
 
その1)一次予選で終わるケース。
 プロの先生が仰っていました。アマチュア時代に一次予選敗退というスランプが、1年半続いたそうです。そのたびに競技会場でパートナーさんに泣かれたそうです。遠征先でパートナーが泣き止むのを、トイレで待ち続けたそうですよ。負け続けるといえば、その代名詞は何と言ってもうちのリーダーでしょう。一次予選敗退はザラ。かつて『敗走日記』というタイトルで書きました。(第154話・161話・226話) そんな彼のパートナーを18年も勤めてきた自分は、『慈悲の女神』でしょうか。(笑)
 
その2)リーダーがパーティーに走るケース。
 競技では結果が出せず惨めな思いをしていると、日の目を見たくなるというのは心情でしょうか。パートナーとの練習をさぼって、リーダーさんが地元のダンスパーティーへ走ることも…。競技選手はダンス愛好家が集うパーティーではモテモテです。競技では負けて相手にされず、肩身の狭い思いをしても(うちのリーダーいわく、競技では自分は『ミジンコ』)、パーティーではマハラジャになれるの? リーダーが自己研鑽せず、パートナーに内緒で、こっそりダンスパーティーで優越感に浸っていることが知れたら、パートナーの逆鱗に触れること間違いなし。
 
その3)お金にまつわるケース
 競技を続けるためにはお金がかかります。レッスン料、競技会出場料、交通費、宿泊費、ドレス代など。ダンス活動にかかる費用については、カップルによって様々でしょう。きっかり割り勘にしているカップルが多いようですね。毎月、リーダーとパートナーがダンス貯金をして、そのお財布から捻出しているカップルもいらっしゃるようです。リーダーがパートナーにお金を要求するケースもあるそうですね。若いリーダーさんだったので、パートナーさんはお金を出してあげていたそうです。でもそのカップルは長続きしなかったそうです。自分達の場合、ダンスのレッスン料は割り勘にしています。なお、競技会出場料、交通費、宿泊費、年間の選手登録料に関しては、この18年間自分は一度も出したことはございません。(オカネはオトコが出すもの?)
 
 自分が『慈悲の女神』ならば、うちのリーダーは『菩薩の精神』でしょうか?(苦笑)競技ダンスはメンタルな部分が試合に影響してまいります。勝つためには細やかな気遣いが必要でしょうか。そういえば遠征先でご夫婦の競技選手が、駐車場から手をつないで会場入りされるのが目にとまりました。
「仲が良いですね。」
お声かけしたところ、
「これは(勝つための)作戦だ。」
シリアスな表情で、ご主人はそう仰っていましたね。嗚呼、ダンス円満。アマチュア競技選手の皆さま、あなたも工面、あるある?(笑)
著者 眼科 池田成子