コーチャー:「あなた達、やっと股関節が噛み合ってきたわね。」
競技会ではドレスと燕尾服を着ているので外から見て分かりませんが、男女が組んで一体感のあるダイナミックな踊りをするためには、男女の股関節が歯車のように噛み合っていなければなりません。
パートナー:「あなたと股関節を合わせて踊れるのに、18年かかったわ。」
リーダー:「競技ダンスのリーダーとパートナーは、夫婦以上の関係と比喩される所以はそこにあるのか?」
パートナー:「18年は長過ぎよ! 気が遠くなるほどの歳月だわ。」
リーダー:「続けていれば、きっと良いことがある。そう言ってくれたA級の先輩の言葉を信じて、やめずに続けて良かったよ。」
股関節が噛み合わずに踊っていた時代は、双方が悶絶しながらの踊りでした。とりわけフォーラウエイ・リバース・アンド・スリップ・ピボットでは、リーダーは踏ん張って、お猿さんのように歯をむき出していましたね。踊るというより、リーダーとパートナーで相撲をとっていた? (第355話)
リーダー:「5年で結果を出さなければ、愛想をつかしてパートナーが去ってゆくのも分からんではないよ。」
パートナー:「5年はひとつの節目だわね。高い養毛剤を使っていたのに結果が出ないので、先輩は5年でやめたって。」
それから二人は組んで、ワルツの練習を始めました。
パートナー:「ところで、本物の夫婦って何?」
リーダー:「フーフ? お互い助け合う人?」
パートナー:「うちのスタッフに聞いたの。一緒にいて邪魔でない人ですって。」
リーダー:「なるほど。」
パートナー:「夫婦とは我慢できる人、許すことができる人、流せる人。先輩の奥さんはそう言っていたわ。」
リーダー:「へえ。」
パートナー:「最後まで責任をとる人、そんな返答もあったわ。夫婦とは世界中でその人だけいてくれれば良いと思える人、ノロケてそう答えていた同級生もいるわ。」
リーダー:「素敵なセリフだね。」
パートナー:「お坊さんである弟(第52話・158話)に聞いたら、夫婦とは地獄へお供する人ですって!」
嗚呼フーフ、いずれも正解なのでしょうね。独身で赤いちゃんちゃんこのチビ・ハゲ、輝かしい未来のダンナ(奥さん)を夢みて、参考にさせていただきます。(笑)ダンス、負け続けて18年。普通なら10年で結果が出なければ、やめる人続出でしょう。勝つために千葉、茨城の試合に遠征して、一次予選敗退はザラでした。その度に、奈落の底へ突き落とされた気分になりましたね(涙)。敗走日記(第154話・161話・226話)が物語っています。とはいえ、負けても病気しても、やめずに続けていれば良いことがありました。(第386話)大げさではありますが、お坊さんの言葉を引用させていただきます。競技ダンスのリーダーとパートナーとは、良くも悪くも『ダンス地獄』へお供する男女のことでしょう。これってありがたい。合掌!(笑)
リーダー:「成子さん、一緒に続けてくれる人がいるって、本当に素晴らしい!」
パートナー:「そうよね。職場の仲間にも感謝。」
著者 眼科 池田成子