コロナ前を思い起こします、眼科医の自分は、手術室以外ではマスクを着用することはありませんでした。眼科の診察では患者さまとは至近距離、顔と顔が近づきます。(第276話)ニオイに気を配っていましたね。ニンニクを食べるのは、休診日の前の晩と決めていました。うっかりニンニク料理を口にしてしまったら、診療日は朝からそわそわとして落ち着きません。外来診療が始まる前に、眼科の入院患者さまに、こっそりたずねていました。
眼科医:「私は臭いますか?」
Aさん:「臭いません。」
ほっ。でも念のため、別の患者さまにも…
眼科医:「昨夜、ニンニクを食べました。臭いませんか?」
Bさん:「大丈夫です。」
もしや、お世辞では? 面と向かって女の人に「臭い!」だなんて、とても言えない?
眼科医:「私を助けると思って、正直に答えて下さい。私は臭くありませんか?」
Cさん:「池田先生からは、香ばしいニオイがいたします。」
ジーザス!! 眼科医、いそいそとマスクを着用!(苦笑)
ウイズコロナ時代では、マスク着用が定着していますね。マスク生活3年目に突入してしまえば、自分はニオイに無頓着になっていました。
「マスクしているから、ニンニク食べてもいいわよね…」
職場で食べる手製のお弁当は、ゆで卵(第298話)に鶏肉と野菜の炒め物。すりおろしニンニクをたっぷり入れています。眼科医、大胆? コロナさまさまです。(不届き千万で、スミマセン)そうそう、マスクで思い出しました。もう時効でしょうか。今から30年以上昔の、こんな笑える(笑えない?)エピソードがあります。当時の自分は研修医1年目、大学病院の当直当番に当たっていた晩のことです。その晩は眼科医局で焼き肉パーティーがありました。先輩達は医局で肉を焼きながら、お酒を飲んでいました。丁度その時のこと、まぶたを切ったという患者さまが来院され、救急外来から自分はコールされました。患者さま、酒臭いっ! 酔って転んで眼を打ったのね。良くあること。まぶた、縫って良いの? 一人じゃ、ちょっと自信ない…。そこで医局に電話をかけて、先輩にお伺いを立てました。するとマスクつけた眼科医達(酔っぱらい)が、ゾロゾロと処置室へ現れました。(そんなに大勢いらないのに…)当時の当直の看護師は、感心していました。眼科の先生達はマスクを着用なさって、身だしなみが良いですと。(笑)
さて、眼科診療のみならず、至近距離で匂いを気にするといえば、ボールルームダンスもそうです。ダンスパーティーでは、男女がくっついて踊ります。ニオイは見えない敵。(第153話)臭わせないのがエチケット。プロのダンスの先生で、ニンニク臭を漂わせている人なんて、見たこともありません。パーティーでは皆さん、相当気を配っていらっしゃるのでしょう。オジさん達の息は、爽やかな草原の香り。そもそもプロ・アマを問わず、ダンスパーティーの前の晩に、好んでニンニクを食べる人はいないでしょう。ウイズコロナの昨今のダンスパーティーは、当然のごとくマスク着用です。前述の筆者ではありませんが、ダンサーの皆様も気のゆるみが出てくる頃では? 多くの人が大好きなニンニク料理、ラーメン、ギョウザ、焼き肉にキムチ、魅力的ですね。ばくだん(丸ごとニンニク焼き)ブラボー! 食べたい、食べたい。えっ? パーティーの前は、決して口にしないですって! 素晴らしい。あなたはダンサーの鏡です。(笑)体臭、口臭、加齢臭、世の中キケンなニオイに満ちあふれています。マスクなしでも大丈夫? コロナが収束する脱マスクの時代にそなえて『公害』と思われぬよう、ダンスをする人もしない人もセルフケアに心がけましょう。
☆年をとったら、臭うのは当たり前。診察室で、ふわりと石鹸の香りがするご高齢の患者さまに、眼科医ヤラレタ!(笑)
著者名 眼科 池田成子