社交ダンス物語 320 美人画から学ぶ ダンス篇

コラム

 糸病コラム『社交ダンス物語』をご愛読いただき、ありがとうございます。さて、糸病のホームページ、担当医紹介で自分の趣味は、『ボールルームダンス、エッセイ、料理』とあります。実はそこに『酒』も付け加えて申請したのですが、取り消されていました。糸院の風紀を乱すのでしょうか?(ゴメンナサイ) 意外と思われるでしょうけど、私は日本画を観賞するのも好きです。特に美人画に惹かれます。私の知人で、日本画のコレクターがいます。ご自分の所蔵なさる美人画を、かつて笠岡市立竹喬美術館(ちっきょうびじゅつかん)に出品なさりました。
「これは、観なければ!」
時はコロナ前、神戸で開催されていた眼科の学会期間中です。私は学会場を抜け出して、新幹線に乗り、岡山県へ向かいました。特別陳列「艶美の競演 東西の美しき女性」では、美人画の巨匠、東京の鏑木清方と大阪の島成園の作品を中心に、上村松園、北野恒富、木谷千種らの珠玉の作品57点を観賞いたしました。
「美しい!」
自分はもう虜です。名残り惜しくて、絵画の前から立ち去ることが出来ないのですから…。(笑)

 さて、美人画は江戸時代の浮世絵に始まり、明治末から昭和初期にかけて活躍した竹久夢二の作品に代表される日本画の一大ジャンルとされています。令和の現代においても、当時の美人画は様々な商品のラベルやパッケージ等に用いられています。化粧品もそう。『ヘチマコロン』の化粧水の容器には、夢二の美人画のラベルが貼られています。夢二の描く美人像、長身で細身、色白で面長、影のある女性。この化粧水を使ったら、自分も美人になれるの? チビでおむすび型の顔の自分、つい買っていますね。(笑)お酒もそう。淡麗美酒『元禄美人(げんろくびじん)2700ml』 お酒の紙パックには、美しい女性達が描かれています。花魁(おいらん)でしょうか? 時代を超えて、女性の憧れの存在です。赤い着物に、べっ甲のかんざしの美女、凛としたクール・ビューティーです。誰かに似ているな…。あ、うちの病院の、手術室のY師長だ!

 ここ糸魚川(新潟)は、美人の宝庫です。さて、糸魚川のスーパーで購入した『元禄美人』、お酒好きの自分は早速飲んでみました。ん? 清酒と思いきや、合成清酒でした。(ヤラレタ!)でも、許しちゃう? パッケージが美人画ですので(苦笑)。ところで、元禄時代ってどんな時代? ちょっとお勉強しました。江戸時代中期で、5代将軍徳川綱吉の時代です(1688-1704)。産業の発展はめざましく、貨幣経済が進展し、大阪や京都をはじめとする商業都市が繁栄し、町人文化が開花した時代です。でも、その晩年には『生類憐みの令』が発布され、犬に対する愛護は極端。
「この、ハゲ犬!」
うちのリーダーとダンスの練習をしていて足を踏みつけられた時、こう叫びたいっ!(第178話)。元禄時代なら、自分は処罰される? 

 話を美人画へ戻します。自分は巨匠の美人画を所有するコネも財力も知識もありません。でも、美術館のショップで販売されている美人画の絵はがきや便せんなど、ささやかなグッズは購入することはできます。お世話になった方や、大切な人に送っていますね。とりわけ女流画家、上村松園そして島成園の美人画にぞっこんです。女が女を見る目は厳しい? 彼女達の描く美人像は、女性の外面・内面の美しさ、柔らかさ、表情、立ち姿、品格、全てがパーフェクトなのです。スキのない女性美、それが求められるのは、四方向から見られている緊張感張り詰めるフロアに立つ、競技ダンスのパートナー(女)も同じでしょう。ボールルームダンスの競技会においては、ラテンにしてもスタンダードにしても、女はいかに女らしさを踊りで表現するかで決まります。美人画と競技ダンス、相通ずるものがあったのですね。


リーダー:「成子さん、2022年に改正された岩波の国語辞典(第八版)によると、女とは生まれた時の身体的特徴と関係なく、自分はこの性別だと感じている人を含むよ。」
パートナー:「時代で変わるのね。」

著者名 眼科 池田成子