今回のテーマは、『前バランス』です。さて読者の皆さま、ブレない女といえば、どんな女性を想像されますか? 自分の信念を貫き通している女、意思が強く有言実行の女、ダイエット中に甘い物の誘惑に負けない女… そうですね。ちなみに、ダンスで言うブレない女とは、前バランスの女です。『立ち』が、しっかりしている女性を指します。
「ラテンの立ち姿勢は、スキーで滑降するバランスです。」
豪雪地帯、高田のダンススクールで、コーチャーは力説。ラテンの立ちは、前バランス。前バランスのつもりでも、自分はバックバランスで踊っているそうです。最後にスキーで滑ったのは、いつのこと? 永らく滑っておりません。11年前に一度、姪っ子のスキーを借りて滑った体験がありました。(第54話)
『スキーの前バランス、どんなだっけ?』
イメージしているまさにその時、お坊さん(弟)からラインが来ました。
「明日、スキーに行きませんか?」
仏教の名言に『生は偶然 死は必然』があります。今回のスキーのお誘いは、偶然なのか必然か? かつてお坊さんに誘われて、北アルプス登山をしました。(第158話・159話)股関節が使われていない、バランスが悪いと指摘されました。ダンスのレッスンで、コーチャーに言われていることと同じです。
さて、自分にとって11年ぶりのスキーです。その日は晴天でした。コロナのためか休日というのに、ゲレンデはまるで貸し切り状態(スキー天国!)。リフトに乗ろうとしたら、係の人がさーっと駆け寄ってきて、背中に手を添えてくれました。リフトから降りる時も同じです。係の人が優しく背中を支えてくれるのです。
『アタシって、ビギナーに見えるの?』
滑り出して、いきなり派手に転倒しました。(涙)
「もっと、前バランス!」
バックバランスだからコケるのだと、お坊さんも力説。広大で真っ白なフロアもといゲレンデで、四分の四拍子を口ずさみ、ダンスをイメージしながら前バランスを意識して滑ること2時間半。
その後、お坊さんと糸魚川のお店で、ご褒美のランチ(トンカツ)を食べました。午後からは病院の講堂でリーダーとダンスの練習です。愛の踊り、ルンバ。先程スキーで学習した前バランスを意識して踊ったつもり…。
リーダー:「成子さん、もっと前!」
その日の夕刻、ダンスの練習を終えて帰宅するやいなや、病院からコールがありました。木の枝がはじいて目に当たった患者さまが、救急外来に来ておられるとのこと。幸い角膜にはほとんど傷がありませんでした。念のため、眼底検査を行いました。光を当てて瞳を覗く際に、反射的にバックバランスになられる患者さまがいます。目の前の救急患者さまも、眼底検査の際に後ろへのけ反ってしまわれました。
眼科医:「もっと前へ!体を起こして下さい。」
バックバランスのアマチュア・ダンサー、仕事では患者さまに『前バランス』を強調しているのでした。(苦笑)
姉上:「なぜリフトの乗り降りで、背中を支えられたの?」
お坊さん:「お姫様扱いされたね。スキー場の貸しスキーだからだよ。」
姉上:「ダンスと同じ、要は見た目がヤバいのね。(涙…笑)」
著者名 眼科 池田成子