色とスポーツといえば、スポーツ選手のユニフォームの色を連想しますね。赤が多く見受けられます。勝負の時は「赤」を身につけると、有利になると言われるくらいです。「赤」は、競技における選手のパフォーマンスを高める色であると、科学誌Natureにも掲載されています。「赤」、それはアドレナリンを分泌し、興奮を促す色。消防車の色も、救急車のクロスの色も、パトカーの回転灯も赤。そして、賞味期限ギリギリのスーパーのお買い得商品に付けられた札も赤。(まさに警告色?)正反対の、「青」も良いですね。集中力を高めてくれる色です。興奮を押さえ、気持ちを落ち着かせてくれます。冷静に戦えますね。手術室のガウンの色も青です。スポーツに限らず、ビジネスシーンでも、色のもたらす効果は私たちの関心を集めています。
ボールルームダンスの競技会においても、選手のドレスの色は重要視されます。プロフェッショナルの競技会、そこはわずかの差で決まる王座の奪い合いです。決勝での勝負色(パートナーのドレスの色)は、「白」「赤」「黒」が多いですね。2010年のプロフェッショナル全日本統一チャンピオンの、庄司組の決勝でのドレスの色は、鮮やかな黄色でした。それまでは白を基調としたドレスで戦ってきたそうです。新概念を取り入れたとのことでした。これは、眼科医の視点からも、理にかなっています。男性の20人に1人は色覚異常です(第265話)。ジャッジの先生の中には、強度の先天色覚異常がいらっしゃるかもしれません。その場合、正常色覚の人たちが『勝負色』とチョイスした色で踊っても、赤・緑・茶・黒のドレス、白・ピンク・灰色・水色のドレスは、みんな『同じ色』と見なされてしまいます。色覚異常の人にとって、色の情報はそれほど重要ではありません。例外として「黄」は見やすいといわれますので、ご参考までに。
さて、1月後半から2月といえば、受験シーズンですね。合格祈願の「必勝祈願パンツ」が販売されています。男性用の必勝祈願のボクサーパンツは、赤地と黒地が多く見受けられます。受験においても「必勝」のイメージ色は、「赤」と「黒」なのですね。そこで、大人の色気を高めるランジェリー、女性用の勝負下着をネットで検索してみました。Tバックセクシーレースショーツの色は、競技ダンスの決勝のドレスと同じ。「白」、「赤」、「黒」が圧倒的に多いですね。勝負パンツといえば、こんなエピソードがあります。八十歳になられる男性患者さまが、目の手術を受けるために手術室のベッドに登られました。その時のことです。病衣がはだけて、パンツが丸見えになってしまいました。患者さまのパンツは、カルヴァン・クラインのセクシーな黒のビキニ。執刀医(自分)、そして周りの看護師達の視線は、患者さまの股間に一斉集中。
「嫁の買ってきてくれた、勝負パンツだ!」
患者さま、そうおっしゃって嬉しそう。
ちなみに、筆者の母親は若かりし頃、「牡丹色」を好んで着ていました。鮮やかな赤紫色です。私が子供だった頃、お出かけはもちろんのこと、家庭でも母は牡丹色の和服姿でした。
「どんなに高価なドレスを着ていても、安い和服には、かなわない。」
「薄暗い所(クラブなど夜の社交場)で、女がもっとも艶やかに際立つ色、それは牡丹色だ。」
粋な遊び人の父(第45話)が、かつて母にそう語っていたそうですよ。お父さま、さようですか。今から思えば、母も戦っていたのですね。(笑)
☆ あなたの勝負色、何色ですか?
著者名 眼科 池田成子