社交ダンス物語 316 リーダーとパートナーの会話 31

コラム

 真冬の病院の講堂には、ダンスの練習に挑む病持ち50代独身男女の姿あり。やる気がなくなる病気(甲状腺機能低下症)を患い、ホルモンの補充を受けているパートナー(第267話)は、サボることを考えながら大あくび。一方、脊柱管狭窄症で腰の大手術を受けたリーダーは(第310話)、ダンスやる気満々とはいえ、腰をひねれば激痛が走ります。(涙)コルセットを巻いて、ダンスに挑戦。病院の講堂は、昼間はコロナ対策のための患者さまの待合室、夜は自分たちの神聖なダンス道場。病持ちチビ・ハゲ中年男女は、マタニティビクスの鏡に自分達の姿を映しながら、ヨロヨロとルンバウォークをしています。

リーダー:「寄せて、曲げて、伸ばす。寄せて、曲げて、伸ばす…」
パートナー:「立てない! 後退はまだしも、前進は出来ない。グラグラよ!」
リーダー:「ダンスで一番難しいのは、立ちだ。」
パートナー:「ルンバの立ち姿勢は、バレエのアラベスクが基本と言われるわ。でも私、バレエの経験がないの。」
リーダー:「自分の立てる位置を、見つけるしかない。」
パートナー:「私、やる気がなくなる病気なの。」
リーダー:「成子さん、やる気がなくても、やらなきゃいけない!」

それって、仕事と同じ?(涙)自分は富山大学医学部から地域に派遣されている兵隊さんです。(第282話)令和4年4月からの人事希望を聞かれて…。
「糸魚川総合病院の眼科は、常勤体制の維持をお願いします。」
教授先生に申し出ました。自分は平成10年7月に糸魚川に赴任して23年間、地域医療を務めてまいりました。病持ちの老兵、老害を及ぼす前に若い先生にバトンタッチして、仕事とダンスから離れて、ゆるゆる第三の人生を謳歌しようともくろんでいました。教授先生からのコメントは…
「先生が辞めなければ、常勤体制は維持できます。」
ちなみに、コーチャーからのコメントは…
「自分のことしか、考えていない!」
リーダーは…
「成子さんが去ったら、僕のダンス生命は絶たれる。」

池田医師:「いつまで執刀するの?」
外科S先生:「死ぬまでです。」
ああ、使命感。人生100年時代、さらなる高みへ。仕事とダンス、頑張ります!(涙…笑)

著者名 眼科 池田成子