モンスターペイシェントとは、医療従事者や医療機関に対して、自己中心的で理不尽な要求を繰り返す患者さまのこと。和製英語ですね。脊柱管狭窄症でダンスどころか歩くこともままならなくなったうちのリーダーは、とある病院で二度に分けて腰の手術を受けました。(第308話)入院中に、モンスターペイシェントたる人の存在を知ったそうです。その男性患者さま、若い女性看護師に申し付けられます。
男性患者さま:「××を洗え!」
女性看護師:「ご自分で、なさって下さい。」
病気のため、身の回りのことが出来なくなった患者さまのお世話を、看護師や介護士はさせていただいております。その患者さま、歩行可。手も動きます。誰がどう見たって、自分で出来ると思われる患者さまからのご要望に、病院側は頭を抱えることも…
さて、どうしても女性看護師に××を洗ってもらいたい男性患者さま、次に出られた手段は、病院に設置してあるご意見箱に投書。病院側は、患者さまからの苦情・要望に対しては、速やかに対応しなければなりません。うちのリーダーは、職場では苦情処理係を担当しております。(第126話・第273話)苦情があった場合、言い訳や反論は禁物。話をさえぎってもいけないそうです。迅速かつ適切な処理が必要とのこと。リーダーいわく、苦情処理の心得三か条とは…
その一、 相手の話を最後まで聞く。
その二、 原因を追求する。
その三、 解決の姿勢を見せる。
××を洗えと申し立てるモンスターペイシェントに対し、病院側がどう回答するか、苦情処理係のリーダーは興味津々(ちょっと、意地悪?)。とくと拝見させていただいたそうです。病院側はご意見箱に入れられた患者さまの苦情・要望に対し、速やかに患者掲示板に貼り紙を掲示したそうです。その回答とは…
「陰部清拭(いんぶせいしき)につきましては、歩行が可能でご自身での対応が可能な方には、清拭を行うかの確認が必要であったこと、入院時に事前説明が必要であったと考えられます。…(中略)… 今回いただいたご意見を大事にし、患者さまにとってよいケアを実施できるよう努めてまいります。このたびは、貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。」
苦情処置の基本は、苦情主を怒らせてはいけないこと。話をうちのリーダーへ戻します。うちのリーダーは手術の翌日、集中治療室で目が覚めました。体は全く動きません。動くのは手だけ。朝ごはんは、集中治療室でいただきました。お椀に盛られたご飯を、看護師さんがおにぎりに握って、手渡してくれたそうです。おかずはスプーンで介助。お昼には病室へ搬送。病室では看護師さんが、介助して食べさせてくれたそうです。その1週間後に2度目の手術を受けました。背骨がズレないように、3箇所を6本のネジで固定。
「自分で、食べれません。」
手術翌日は、仰向けのまま腕しか動かず。若い女性看護師さんが食事の介助についてくれて、スプーンでお口まで運んでくれたそうです。食事中に、その看護師さんがナースステーションへ呼ばれました。代わりの看護師さんが来てくれて、アーンと思いきや、ベテランの看護師がやってきて、こう言われたそうです。
「甘えてばかりいると、いつまでたっても自分で出来なくなる!」
『集中治療室から戻ってきたばかりなのに…』
「××洗え!」のしわ寄せが来た?(神様ヘルプ!)コワいので、くちごたえなし。痛いので、体を起こすこともできず。ひっくり返ってもがいているカメのごとし。仰向けのままストローで、お味噌汁をチューチュー飲んだそうですよ。(笑)
著者名 眼科 池田成子