皆さま、糸病眼科の池田です。ここで読者の皆さまに、大切なお知らせがあります。2003年2月から18年間、糸魚川総合病院の院長を務めて下さった樋口清博先生が、今年の3月をもって定年退職なさいます。樋口院長は就任されてから多くの患者さま、そして病院職員から慕われてきました。どんな上司か一言で申し上げるなら、「この人についてゆきたい」、「この人のためなら自分は頑張れる」、「この人をお守りしたい」 部下達からそう敬われる上司でした。発達障害の自分(第207話)にも、温かい眼で見守ってくださいました。今まで自分が『仕事』と『ダンス』を両立させていただけたのは、樋口院長のお蔭と感謝の気持ちでいっぱいです。
樋口院長が、糸魚川からいなくなったら、どうしよう…。不安で心細い日々でした。ここで朗報です。樋口院長は、院長退職後も糸魚川にとどまり、うちの病院で地域医療に携わってくださるそうです。僻地の診療所へも赴いてくださるそうですよ。糸魚川の人々は、今まで通り安心してここに住むことができます。心強く、とても嬉しいことです。その喜びをダンスで表現するならば、憧れのダンサー・ミルコ(世界チャンピオン)と優雅にワルツをご披露させていただける、もしくはピノ(世界ファイナリスト)に情熱的なタンゴを踊らせてもらえる心地でしょうか。
「Shall we dance?」
もし、ピノからクイック・ステップを誘われたとしたら、自分は後ずさりしちゃうかも? なぜって、背骨が折れてしまいそうなので。(笑)
さて、次期院長は、外科の山岸副院長(第144話・第259話)です。山岸副院長も樋口院長と同じ、ダンスに対する理解者です。2008年4月から現在に至るまでの13年間にわたり、自分は糸病コラム『社交ダンス物語』を担当、執筆させていただきました。実はこのダンス物語、山岸副院長の発案なのですよ(ステキ!)。地域にひとつしかない総合病院の眼科を、医師ひとりで診療している筆者をねぎらい、笑顔で口約して下さいました。
Y副院長:「池田先生、糸魚川に新幹線がつながるまでの辛抱です。新幹線がつながったら、東京からうちの病院へ来てくれる先生を呼べます。」
池田医師:「はいっ!」
新潟県は全国で、医師不足ナンバーワンの県と言われます。『陸の孤島』とも呼ばれる糸魚川の医師達は、新幹線の開通に胸をふくらませ、田舎の未来の医療に夢を思い描きます。そして新幹線が開通。(ブラボー!)
新幹線が開通し、田舎の医者は夢から覚めます。
Y副院長:「池田先生はダンスをしているから、ひとりでも大丈夫です。」
池田医師:「はいっ!」
地域の医療は、地域に住む人々で守るしかありません。地域医療の原点とは、地域に寄り添い、地域と地域の人々を愛すること。1998年7月に糸魚川へ赴任して、22年以上ここで診療させていただいている私は、そう確信しております。地域医療を守るためには、1)看護師を含む病院スタッフの数の充足とその生活を守る。2)各診療科の専門医の仕事と生活を守る。この2つを新院長として就任する山岸副院長は提唱しています。安心して住み続けられる街を目指して、地域にひとつしかない糸魚川総合病院の発展を願います。
☆目指せ、トカイナカ!
著者名 眼科 池田成子